歴史的な建物と再開発

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2023年5月28日追記

慶應義塾大学三田キャンパス内の福澤諭吉記念慶應義塾史展示館(図書館旧館)に行ってきました。あわせて三田演説館も見てきました。(内部は非公開です。)

図書館旧館 2023年5月27日撮影
演説館 2023年5月27日撮影

2023年2月5日

以前、神社仏閣と再開発について投稿しましたが、今回は歴史的な建物についてです。高輪の周辺には、明治から戦前にかけて建てられた歴史的建造物が多数、現存しています。ざっと数えても以下の通り19の建造物があります。

なお、この中で、一般に公開されているのは、東京都庭園美術館港区立郷土歴史館に限られます。ご注意下さい。

建物所在地完成設計者
慶應義塾 三田演説館三田二丁目15号45番1875年
明治学院 インブリー館白金台一丁目2番37号1889年不祥
明治学院 記念館白金台一丁目2番37号1890年H.Mランディス(宣教師)と推定
開東閣(旧岩崎家高輪別邸)高輪四丁目25番33号1908年ジョサイア コンドル
聖心女子学院 正門白金四丁目11番1号1909年ヤン レツル
グランドプリンスホテル高輪 貴賓館(旧竹田宮邸)高輪三丁目13番1号1911年片山東熊
慶應義塾 図書館旧館三田二丁目15号45番1912年曾禰達蔵・中條精一郎
綱町三井倶楽部(三井家迎賓館)三田二丁目3番7号1913年ジョサイア コンドル
清泉女子大学本館(旧島津家本邸)東五反田三丁目16番21号1915年ジョサイア コンドル
明治学院 チャペル白金台一丁目2番37号1916年ウィリアム メレル
ヴォーリズ
キリスト友会 フレンズセンター三田四丁目8番19号1922年ウィリアム メレル
ヴォーリズ
高輪館(旧朝吹常吉邸)高輪三丁目19番1号1925年ウィリアム メレル
ヴォーリズ
聖心女子学院 聖堂・初等科校舎白金四丁目11番1号1928年アントニン レイモンド
東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)白金台五丁目21番9号1933年権藤要吉(宮内省内匠寮)・アンリ ラパン
服部ハウス(旧服部金太郎邸)白金二丁目5番36号1933年高橋貞太郎
高輪消防署二本榎出張所高輪二丁目6番17号1933年越智操(警視庁総監会計課営繕係)
高輪台小学校高輪二丁目8番24号1935年鈴木忠雄(東京市土木局建築課)
東京大学医科学研究所1号館(伝染病研究所)白金台四丁目6番1号1937年内田祥三
港区立郷土歴史館(旧公衆衛生院)白金台四丁目6番2号1938年内田祥三

これらのうち、再開発と関係しそうなのは、現時点で、ハツトリハウス、東京大学医科学研究所1号館、グランドプリンスホテル高輪の貴賓館、高輪館です。

ハットリハウスは、2014年9月30日付で16,815㎡の敷地と併せて305億円でにシンガポールのCity Developments Limitedに売却されています。City Developments Limitedは、今後、敷地内にマンションを開発すると同時に服部ハウスを保存する計画とのことです。残念ながら計画通りに進んだとしても、一般に公開される可能性はあまりないのではないかと思われます。なお、現時点では具体的な開発計画は全く発表されていません。

City Developments Limited Websiteより引用

東京大学医科学研究所1号館が所在する東京大学の白金台キャンパスでは、東京大学が三井不動産と協力して土地有効活用事業を行うことが決定しています。定期借地権を設定し、滞在型ホテル・レジデンス(サービスアパートメント)と医療連携サービス付き分譲マンションの開発を行います。この開発において、現時点では1号館については何も触れられていません。是非とも保存する方向で検討していただければと思います。

環状4号はグランドプリンスホテルの敷地内に開通することになります。貴賓館は、4号線から20m程度南側に位置することになります。したがって4号線の開通の影響は、ほぼないものと思われます。一方で、グランドプリンスホテルは、品川駅西口地区B地区に含まれています。現時点では、B地区の再開発については、何も発表されていませんが、こちらもぜひ貴賓館を保存する方向で検討していただければと思います。

グランドプリンスホテル高輪 貴賓館 2023年5月2日撮影

高輪館は、2016年9月に日本テレビに売却されるまでは、東芝グループの迎賓館東芝山口記念会館として使用されていました。現在は日本テレビのドラマ撮影で使用されているようです。現時点で高輪館を対象とした特段の再開発の予定などはありませんが、用途がドラマ撮影だけとなると、今後、高輪ゲートウェイシティの再開発が進む中で再開発の対象となる可能性もあるのではと不安になります。日本テレビには恒久的な管理が可能となるような(ドラマの撮影だけに限定しない)活用方法を検討していただければと思います。

最後になりますが、高輪周辺の再開発において、歴史的な建造物として高輪築堤を外すわけにはいきません。しかしながら、ここで取り上げた建物と同列で語られるべきものでもありません。高輪築堤については、別な機会に取り上げたいと思います。